大人のための星とタロット/文月メロ

母娘の距離 ― 心のキャンバスに、もう一度余白を(前編:Nさん)

母娘の距離 ― 心のキャンバスに、もう一度余白を(前編:Nさん)



先日、カフェでお二人の方を鑑定させていただきました。

NさんとKさんとさせていただきます。
お二人は、以前通っていた趣味の絵画教室でつながった友人同士です。

そして偶然にも、この日のお二人には共通するテーマがありました。


近居、あるいは同居しているお母様との関係です。


同じ「母と娘」というテーマを持ちながらも、これまで歩いてきた道も、お母様との関係も、それぞれ違います。中身がまったく異なるため、今回は前編としてNさんのお話を、後編でKさんのお話を書いていきたいと思います。


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まずは、Nさんのお話からです。



■ 娘の不安・・・「母は、私が思っていたより早く老いているのかもしれない」



今から二年ほど前。
Nさんは、ご実家の近くに家を建てました。

土地は、お父様が所有されているものだったそうです。
親の土地に家を建てられることは、経済的にも、これから先のことを考えても、有利な選択のはずでした。

家を持つことは、以前から彼女が望んでいたことでもあります。
近くに住んでいれば、親に何かあったときすぐに駆けつけられる。
そんな安心感もあったのだと思います。

新しい家のことに夢中になり、忙しく過ごしていた頃は、まだそれほど気にならなかったそうです。
ところが、新しい暮らしが少しずつ落ち着いてくると、それまで見えていなかったものが目に入るようになりました。

それは・・・あまりにも近すぎたのです。

歩いてすぐの距離だからこそ、お母様の暮らしぶりの細かなところまで、否応なく目に入ってきます。
顔を合わせる回数も、自然と増えていきました。

「近くにいるから大丈夫」

そう思って選んだ近居のはずが、いつしか、

「近くにいるからこそ、しんどい」

という感覚に変わっていったそうです。

そんな中で、Nさんの目に映るようになっていったのが、お母様の変化でした。
「母は、私が思っていたよりも早く老いてしまっているのではないか?」
そんな思いが、少しずつ彼女の心を占めるようになっていきました。

そんな彼女でしたが、仕事をしている間だけはお母様のことを考えずにいられる。
けれど仕事を終え、家へ向かう頃になると、足取りが重くなる。

自分の家のこと。
両親の家のこと。
そして、お母様のこと。

一日の終わりが近づくほど、いくつもの役割が彼女を待っていました。
そんな中、お父様が体調を崩し、入院することになります。

それまでNさんにとって、

「お母さんを支えているのは、お父さん」

という安心感があったのだと思います。
そのお父様が不在になったことで、家族のバランスは大きく変わっていきました。



■ 自分の道を応援してくれた母


Nさんとお母様の関係は、決して「仲の悪い母娘」ではありません。
むしろ、お話を伺っていて私が強く感じたのは、Nさんがお母様をとても大切に思っていることでした。

若い頃、Nさんは美術の道を志しました。
美術を学ぶには、お金も時間もかかります。

それでもお母様は、娘の才能を信じ、やりたいことを応援してくれたそうです。
思うように進まなかった時期があっても、

「この子ならできる」

と信じてくれた。
自分の好きなことを、自分で選ばせてくれた。

だからこそ今度は、

「私がお母さんを少しでも幸せにしてあげたい」

という思いが、Nさんの中にあったと語ってくれました。

愛されてきたからこそ、支えたい。
応援してもらったからこそ、今度は自分が応えたい。

母娘の距離が近くなる背景には、葛藤だけではなく、そんな愛情や感謝が隠れていることもあります。


■  ホロスコープに映る母と娘(シナストリーから)



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占いでは「月」は、幼い頃の安心感や感情の反応、そして母親との関係を考えるときにも大切に扱う天体です。

Nさんの月は、獅子座にあります。

だから「獅子座の月だから、こういう母親だった」と決めるのではありません。

実際のお話を伺ったあとでホロスコープを眺めてみると、


「自分の才能を認め、表現することを応援してくれた母」


というNさんの記憶と、獅子座の月が持つ「自分らしさを表現する」「自分の光を育てる」という象徴が、どこか重なって見えてきました。

一方、お母様の月は蠍座。

そしてNさん自身も、火星・土星・冥王星を蠍座に持っています。
特に、お母様の蠍座の月と、Nさんの蠍座の火星は、とても近い位置にあります。

お母様の感情が動けば、Nさんの中にも、

「私が何とかしなければ」
「私が動かなければ」


という力が動き出す。

そんな母娘の感情の深い結びつきを考える、一つの象徴として、私はこの配置を眺めました。



■  親と子の役割が変わるとき



お父様が不在となった中で、Nさんは懸命にお母様を支え続けました。
それはまるで、これまでの関係が少しずつ逆になっていくような時間だったのかもしれません。

親子関係には、ある時を境に、
支えてもらう側だった子どもが、親を支える側へ回る。
そんな時期が訪れることがあります。

そして、この二年ほどの彼女の歩みを伺いながら、占い師としてもう一度ホロスコープを眺めてみました。

占いでは、土星より外側をゆっくりと巡る天王星・海王星・冥王星を「トランスサタニアン」と呼びます。動きがとても遅い天体たちなので、出生図の重要な場所に触れる時期は、これまで築いてきた価値観や生き方が、長い時間をかけて組み替えられていく時期として読むことがあります。


家を持ったこと。

母の老いに気づいたこと。

父が倒れたこと。


そして、「娘」であった自分が、いつの間にか両親を支える側になっていったこと。


もちろん、星がこれらの出来事を起こしたということではありません。

けれど、一つひとつのお話を聞きながら星を重ねてみると、この二年間はNさんにとって、
「これまでの自分の役割が大きく組み替えられていく時間」
でもあったように、私には見えました。



■ 母娘のあいだに、風が通る



そんなNさんを見て、家族も動き始めました。

遠方に暮らすお兄様は、
「近くに住んでいるからといって、毎日お母さんのところへ行かなくてもいいんじゃないか」
と、彼女に伝えました。そしてお母様にもお互いに距離を保つことも大切と諭したそうです。
それは、長男としての疲弊する妹の様子を見て取った行動でした。


そしてご主人も、
「君は一緒に来なくていい。家で待っておいで。」
と、一人でお母様のもとへ出向き、ご自身の言葉でこれからの事を話をされたそうです。

興味深いことに、お兄様は天秤座。
ご主人は水瓶座です。

どちらも占いでは「風」のエレメントに属します。
だから二人が風の星座だからNさんを救った、という話ではありません。

ただ、家族の出来事を聞いたあとで星を眺めると、感情の渦の中にいたNさんに対して、二人がそれぞれ少し離れた場所から別の視点を持ち込んだことが、私にはまるで、

「母娘のあいだに風を入れる」

ようにも見えました。

離れることは、見捨てることではありません。
距離を取ることは、大切ではなくなることでもありません。

近すぎて全体が見えなくなったとき、ほんの少し離れることで、初めて見えてくるものもあります。
それは、絵を見るときにも少し似ています。

キャンバスのすぐ近くに立っていると、目の前の一色しか見えない。
けれど何歩か後ろへ下がると、初めて全体の形や色のバランスが見えてくることがあります。
親子の距離にも、そんな瞬間があるのかもしれません。



■ キャンバスにできた、小さな余白


帰り際だったでしょうか。

同席しているご友人のKさんに、彼女がふとこんなことを聞きました。

「木曜日の絵画教室は、今は満員ですか?」と。

だからといって、Nさんがもう一度、絵画教室へ戻ろうとしているということではありません。
ただ、その何気ない一言が印象に残りました。

ここしばらく、Nさんの心のキャンバスは、お母様を思う色でいっぱいだったのかもしれません。
そこへ、お兄様やご主人の言葉や行動によって、少しずつ風が通り、ほんのわずかな余白が生まれた。

そしてこの日、かつて絵画教室でつながっていたご友人と同じテーブルを囲み、自分自身のホロスコープを眺めながら言葉を交わしているうちに、意識がほんの一瞬だけ、

「お母様を支える娘」になる以前の自分

へ戻ったのかもしれません。

絵を描いていた自分。
何かを作ることに夢中になっていた自分。
自分の世界を、自分の色で表現していた自分。

余白ができたからといって、すぐにそこへ何かを描く必要はありません。
何色を置くのか。
あるいは、しばらく余白のままにしておくのか。


それを決めるのは、Nさん自身です。

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■ 鑑定を終えて



鑑定を終え、この日お作りした鑑定書をお渡しして、私たちはカフェをあとにしました。
その後、ご自宅でゆっくり鑑定書を読まれたNさんから、こんな感想をいただきました。


「今、家でゆっくり読んでみて心がすっと軽くなりました。」

現実は直ぐには変わらないですが、考え方一つで見え方は変わるということ。

自分と母を重ねすぎない。

どうしても母の幸せを少しでも叶えたいと傷付いた気持ちを堪えて接してきました。でもそれがお互い良いとは限らない。お互い自分の考えがある。
改めて実感しました。

私の事を理解してくれようとしているメロさんの言葉が本当に嬉しかったです
感想が重くなってしまいましたが、皆さんと話せて良い1日でした。


「現実は直ぐには変わらないですが、考え方一つで見え方は変わること。」


その言葉を読みながら、今回の鑑定で見えてきた「余白」という言葉を、私も一度思いました。
夏から秋に少しづつ移り変わる季節星空も変化をしていきます。




■  そして、9月の終わりへ


9月は始まったばかりですが、少し先の星の流れをお話しします。


9月の終わりには、牡羊座で満月を迎えます。


その翌日には火星が獅子座へ。

さらに月末には、水星が蠍座へと移っていきます。


牡羊座に太陽を持ち、獅子座に月を持つNさん。

そして火星・土星・冥王星という三つの天体を蠍座に持つNさんのホロスコープを眺めていると、この9月末の空模様も
また今回の鑑定で見えてきたテーマとどこか重なって見えます。


「私は、本当はどう感じているのだろう?」
「私は、これからどうしたいのだろう?」



誰かの気持ちを先に考えるのではなく、自分自身に問いかけること。
そして、心の奥にあった思いを、少しずつ自分自身の言葉で語っていくこと。

もちろん、9月末になれば何かが突然変わる、ということではありません。
むしろ、その変化はすでに始まっているのかもしれません。

Nさんは今回の感想の中で、

「自分と母を重ねすぎない」
「お互い自分の考えがある」


と、ご自身の言葉で書かれていました。

現実そのものは、すぐには変わらない。
それでも、心に少し余白が生まれることで、今まで聞こえにくかった自分自身の声が、少しずつ聞こえてくることがあります。

余白とは、何もない場所ではなく、
自分の色を、もう一度置くことのできる場所なのかもしれません。

そしてNさんのキャンバスに、これからどんな色が置かれていくのか。
その答えを急ぐ必要はありません。

そのキャンバスを描いていくのは、Nさん自身なのですから。
今回、大切な想いをお話してくださったNさんに感謝いたします。
Nさんとお母様の間に穏やかな風が吹きますように願ってやみません。


次回、後編ではお友達のKさんのお話を書いていきます。




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